解雇のショックを乗り越えフリーランスへ。
たかえさん
埼玉県 / 30代後半 / 特許調査員・ブロガー / フリーランス
家族構成:自分・夫・長女(4歳)・次女(1歳)
仕事について
出産前Before
特許技術者正社員
9:00~17:00 ※残業月20時間
出産後After
特許調査員/ブロガーフリーランス
10:00~16:00
お仕事について教えてください。
フリーランスで特許調査員をしています。化学・医薬・バイオテクノロジー関連の特許情報の調査と分析をして顧客に報告する仕事です。毎日朝の家事があらかた済んだ10時ごろから仕事を始め、お迎えに行く時間まで休憩をはさみながらマイペースに進めています。納期が迫ってきたときや、もっとやり込みたいときは子どもたちが寝たあと22時くらいから作業することもあります。作業の主体はパソコンですね。オンラインの特許データベースを使って調べたり、あとはオフィス系ソフトで解析をしたりして報告書を作成します。外出はほとんどないので近所のシェアオフィスを使いたいな、と考えているところです。
技術の知識も法律の知識も求められるお仕事だと思いますが、このお仕事に就いたきっかけを伺えますか?
もともと農学の研究者になりたくて大学院に進んだのですが、どうにも向いていないことに気づいてあきらめたんです。進路をどうしようか悩んでいたときに「特許技術者が向いてるんじゃない?」とアドバイスくださる方がいて、仕事内容を教えてもらい興味が湧きました。研究者になって新しい技術を作り出すことはできなかったけれど、新しい技術を世の中に出すためのサポートができるなら、やってみようかなと。その方の紹介もあって新卒で特許事務所に入所しました。4回ほど転職をしましたが、翻訳会社や医療機器メーカーの知財部などずっと知財関連の仕事です。いろいろあっても知財の仕事が好きですね。
その後フリーランスになられたのですね。
1人目出産前から特許技術者として働いていた特許事務所を退職して、2人目の産休・育休中にスカウトを受けた別の調査会社に育休復帰と同時に転職したんです。しかしですね……試用期間中に契約打ち切り、つまりは解雇の通知を受けました。解雇理由としては先輩社員との相性、業務に対する姿勢の違い、子どもの体調不良が重なったことによる勤務日数の少なさでした。突然のことで、自分の体調も維持できなくなり、これまで頑張ってきましたけど、いったんワーママを引退することにしました。仕事を失くして「仕事をしていた自分」「稼げていた自分」のアイデンティティが消えたのはショックでした。鬱一歩手前くらいの毎日でしたね。離職票が届くまでのひと月くらい、ぼーっと過ごして、やっと「まぁ楽しく、ぼちぼちやっていこうかね」という境地にたどりつけました。
幸い、特許の調査ができるということで知人の弁理士先生からご依頼が何件かあったので、フリーでどうにかやっていこうかなと思って今に至ります。そのうちまたどこかの事務所に就職したいと思っています。弁理士の資格も諦めきれないですし。そうなったときにも今子どもたちと一緒に育つ間に身につけたスキルは活かせるでしょうし、誰もが働きやすい職場を作るために必要な時間だと信じています。
そうだったのですね。お子さんの体調不良はかなり長引いてしまったのですか?
次女は0歳4月入園の生後8ヶ月から保育園に通いはじめたのですが、やはり最初は体調が不安定でした。中耳炎になりやすく、中耳炎かと思えば保育園で流行っている手足口病をもらってきていることも、併発することもありました。4~5日は通常登園できない状況が続いて、本人もしんどかったと思います。病児保育もほぼ常連で、病児保育が使えない日を見越して飛行機の距離に住む義母に1週間きてもらったこともあります。
そもそも転職しようと思った理由はなんだったのでしょうか?
以前の職場ではワーママへの理解が薄く、子どもの都合で休む場合の心理的な負担が大きかったです。発明を特許権にするための、「権利化業務」を担当していまして、基本的に法定期限や顧客期限さえ守れば自分の都合にあわせて進められる仕事でした。逆に期限ギリギリのタイミングで子どもの不調が発生した時や、休みが長引いて期限が近づいてくる時には一気に詰みました。長女が小さいときはリモートワークも自由にできなかったので、家で仕事することもできず、結局仕事を上司に引き上げてもらうこともありました。上司も上司の仕事で手一杯だとわかっていたので、心苦しかったですね。特にそのときの上司が50~60歳代のいわゆる「粘土層」で、妻に子育てを丸投げしたような人たちでした。その下の30代後半から40代前半くらいの先生たちは育児にも主体的な人が多く、いろいろ相談もしていたんですけど……。ワーママの弁理士の先生もいました。でもかなりタフな方で、朝3時に起きて仕事をしている人だったんです。それはそれで尊敬しますが、私には真似できないなと……。そのワーママ先生と病児保育の話をしたことがありますが、自分のところと差がすごかったんですよ。長女を産んだころに私が住んでいた自治体は病児保育がほぼ使えない状態だったのですが、その先生のところはいたれりつくせりで、住む場所も味方しているように感じました。ワーママ先生に「これ以上ここでは頑張れない、ドロップアウトしそうだ」と相談したときには、「あなたは頑張れる人だと信じています」と言ってもらえたのですが、この期待に応えられるほどタフには立ちまわれませんでした。
ひとりで仕事を進められるのは、ひとりでなんとかしないといけないのと裏表ですよね。周りの理解がないとつらいです。フリーランスになってからは前職でのつながりでのお仕事もされているのでしょうか?
いえ、前職の取引先とはまったく関係なく、今は主にプライベートでお付き合いのある特許事務所の弁理士先生や、大学教授の方のお仕事を手伝っています。SNSでつながりができた方のお仕事ばかりです。こちらの状況を理解したうえで依頼いただいているので、無理なく仕事を進められています。
今のお仕事で悩んでいることなどはありますか?
フリーランスゆえに本業の特許調査以外のことも自分でやらなければならないことです。フリーランスは「自分の腕一本で食べていくぞ」という熱意でやっていくものだと思っていましたが、実際は腕が何本あっても足りないと気づきました。本業以外でやることの筆頭は経理ですね。請求書の書式から、消費税はいただいていいのかとか、請求書1枚についてもこんなにいろいろなことが絡み合うものだと勉強です。仕事をする意味が分かる重要な作業なんですけどね。
あとは一番深刻なのが営業です。今のところSNSでつながりのある方のお仕事をいただいていますが、そのうち事業を拡大するのに、どう拡大していくか、営業戦略を自分で考えなければいけませんし、実際に営業をかけるのも自分となると悩むことばっかりです。「そもそも今以上に仕事を受けられるのか」とか、「でももっと稼ぎたいし」とか考えると本当に悩ましいです。
もうひとつ地味につらいのが業務環境の構築です。在宅勤務なので好きなところで好きなようにやれるなーと思ってたんですが、やはりオフィスチェアじゃないと腰痛が出たり肩こりがひどくなったり、フルサイズのキーボードでなければ入力が遅くなったり。オフィス家具やPC環境のどれひとつをとっても、「会社」というものが準備してくれていたんだな、と痛感しました。あと、自宅で作業していると、どうしても業界トレンドを追いづらいですし、経済の話題も全然入ってきません。新しい技能や知識を習得するのに、会社勤めのとき以上にエネルギーが必要です。
最新の知識やトレンドをどう追いかけるかはフリーランスの課題ですよね。なにか具体的にされていることはありますか?
今は特に動けていないというのが本音で、前職時代に貯めた技能を切り崩している感じです。ありがたいことに特許庁やその外部団体がやるセミナーは個人でも無料で参加できるものがあるので、今後はそこから新しい技術を習得したいと考えています。資金面では、仕事アイテムともいえる特許データベースが課題で……。無償で使えるデータベース以外の商用データベース(有償)を契約すると月額1万円くらいはかかるので、それをペイできるまで毎月稼げるかどうか、稼げなくても投資の意味で契約すべきか毎月悩んでいます。
生活について
タイムスケジュールSchedule
- 7:00
- 子どもたちと起床、夫が子どもたちの朝食準備、身支度
- 7:45
- 子どもたち着替え、食器を食洗機へ
- 8:00
- 長女、父と登園(徒歩1分認可園)
- 8:30
- 次女保育園送り(自家用車10分認可園)
- 9:00
- 帰宅、家事
- 10:00
- 業務開始
- 12:00
- ランチ休憩(ブログの取材を兼ねる)
- 16:00
- 業務まとめ、夕飯準備
- 17:00
- 長女、徒歩でお迎え
- 17:30
- 次女、車でお迎え
- 18:00
- 帰宅、夕飯
- 19:00
- 入浴、スキンケア、洗濯乾燥機スイッチオン
- 20:00
- 子どもたちと寝室へ
- 21:00
- 子どもたち就寝
- 22:00
- 仕事、ブログメンテナンス、晩酌など(日によっていろいろ)
- 24:00
- 就寝
保育園までの距離、送り迎えの担当を教えてください。
長女は歩いて1分の保育園に、次女は車で10分(歩くと20分)の保育園に通っています。長女の送りは夫が、次女の送りと2人のお迎えは私が担当しています。夫が早出や出張のときは長女の送りも私です。
きょうだい別園なのですね。保活はいかがでしたか?
毎年保育園を新設して待機児童解消に向けて頑張っている自治体に住んでいるのですが、長女のときは0歳4月の入所申請で待機児童になりました。一次で全滅してしまったので、それから認可外ポイントを足すためにシッターさんを見つけ出しました。こちらのシッターさんに在園証明を出してもらうことで認可外ポイントがプラスになり、二次調整で認可保育園に内定しました。ただ希望を出したときには通えそうだと思ったんですが、実際子どもを連れて移動すると思っていた以上に時間がかかってしまって……。自転車でも、電車+徒歩でも保育園に送ってから通勤するのは無理だと判断して、辞退しました。幸い近所にある認可外保育園に入れることになったので6月からお世話になりました。翌年、長女が1歳4月のタイミングでその認可外保育園が認可保育園に移行することになって退園しなければならなかったのですが、特別調整でかなりの加点があり、1歳4月の保活は無事に小規模認可保育室に通えました。しかも3歳児の進級先としての連携園があり、もう一度保活しなくても大丈夫と分かって、一安心でしたね。
次女のときは0歳4月の入園が、長女が連携の保育園へ移るタイミングと重なったんです。このときに候補に挙がったのが長女が通っていた保育室からの進級先として決まっていた保育園と、近所に新設された保育園の2つです。進級先の保育園は少し遠いので、この近所の保育園に2人で通えるのがベストと思ったのですが、この保育園は0歳児クラスの枠が3人で我が家のポイント的に確実に入れるかどうか分からなかったんですね。長女が内定していた保育園は0歳児クラスで6人募集していたので次女はそちらを第一希望にして無事入園が決まりました。その後4月の2次募集の時点で近所の保育園の3歳児クラスに空きがあったので、長女の転園申請をしたところ転園が決まったので1年間別園で過ごしました。長女が通っている近所の保育園は1歳児クラスで受け入れ人数がかなり増えるので、次女が1歳4月のタイミングで同園になるように次女の転園申請をしまして来春からやっと同園になることに内定しました。きょうだい児が在園している施設にのみ転所希望を出すと加点がつく運用になったそうでそれが効きました。保活について思うことはいろいろありますが、0歳4月のときの「枠が多い方に賭ける」というギャンブルのような要素はなくなってほしいと思います。
フリーランスになった際、保育園は特に問題はなかったでしょうか?
失業にあたって保育園はどうなるのかも不安だったのですが、保育課で相談したら退職して状況が変わっても年度内は保育園を退園しないでいい制度だと聞き本当にほっとしました。要項をみたところ、年少児以降は就学まで親のどちらかが退職しても通い続けられるようです。0~2歳児は年度が変わるタイミングで調査があり、状況によっては退園しなければならないケースもあるようです。今のところステータスとしては会社都合による失業状態なので、自治体の保育課には失業保険の受給者証の写しを提出しています。それでまた加点がついています。それもあって1歳4月で転園が成功したんでしょうね。解雇になったこともフリーランスで仕事をしたりしなかったりの不安定な毎日を過ごしていることも、本音としてはだれにも言いたくなかったのですが、保育園の方で先生方にお話してみたら、私自身のことまで気にかけていただいて。泣きそうになっちゃいましたね。思いやりのある先生方のいる施設にお世話になれてありがたいです。
家事の分担はいかがですか?
平日はほぼすべて自分です。夫は仕事が本当に忙しくて、毎週のように国内出張、毎月のように海外出張に行っています。本当にタフな人です。平日の家事と育児は仕事に都合のつきやすい私の仕事、ということで今は納得しています。とはいえ、夫も朝は積極的に子どもたちの面倒をみていますし、夫は本人が食べる夕飯やお弁当は自分で支度しているので、不平等感もないですね。むしろ私がやらなすぎなんじゃ……って思ってしまいます。
家事分担についてはあまり話したことがないですが、話し合うとしたら「家事自体を少なくなるように工夫したいんだけど、どうしようか」というところからですね。玄関の掃除をしやすくしたいから、靴はちゃんと下駄箱にしまってほしい、とか、家電に頼る前提で便利家電の導入を相談するとかになると思います。私自身も調理家電やサービスを活用して、家庭内のことをどんどん楽にして生活の疲れを少なくしたいな、と思って家事動線や日常使いのアイテムを工夫し、浮いた時間で子どもたちとのんびりできるようになりました。そういう工夫を同じワーママさんにシェアできたらな、と思って「とにかく○○しない家事」というコンセプトでブログを作りました。思いついたときにブログを書いて、毎日のなかに発見した家事を楽にする仕組みを発信しています。
「○○しない家事」気になります!具体的にやめたことはありますか?
一番楽になったことは、「平日に調理をしない」ことですね。休日に一気に作り置きをして、平日には温めて盛り付けるだけ、というのが私の性格に合っていました。あとは「ガスコンロを使わない」こと。意外とやらなくて大丈夫でした!たとえばお味噌汁もガスコンロを使わずに、だしパックと簡単な具でどうにかなっています。適当でいい加減な調理法ですが、十分においしかったですし、子どもたちもよく食べて、「は~、楽してもいいんだな」って思いました。洗いものはだしパックを入れた軽量カップだけなので、本当に楽です。ほぼオーブンレンジか炊飯器で調理するので、片付けの楽さが違います。
佐光紀子さんの「『家事のしすぎ』が日本を滅ぼす」という本を読んで、共働き家庭、専業主婦家庭のどちらもが家のことを丁寧にやり込みすぎているという気づきがありました。それで、オーバーフローするほど家事をしないことを意識して家事の仕組みを変え、いろいろと割り切ったら、家事が一気に楽になることが分かってきました。
仕事と子育てを両立するにあたって必須のアイテムやサービスはありますか?
まず車です。保育園の送り迎えもあるので必須ですね。日用品の宅配にはロハコ、食品は生協(パルシステム)を使っています。パルシステムのミールキットは野菜がカット済みで、包丁とまな板もいらないし、野菜くずも出ません。あとは調味料もあわせてあるので、味付けもサーっとできるのが好きです。ミールキット以外で買える食材も、骨取り済みの魚など子どもの夕飯にするのに手間がかからなくて便利です。レンジで温めるだけ、フライパンで焼くだけ、と工程ひとつで一品になるものが冷凍で届くので助かります。あとは多機能炊飯器も酷使しています。ご飯を炊く以外にもパンを作ったり、蒸しものをしたり、煮込み調理も炊飯器でやっています。取扱説明書にあるレシピ集を見たら、思った以上にいろいろな調理ができてびっくりしました。オーブンレンジも必須アイテムですね。機能が多くて助かります。東芝の石窯ドームシリーズを使っていて、レンジ、オーブン、加熱水蒸気調理、グリル調理、なんでも任せています。加熱水蒸気調理で「揚げない唐揚げ」を作ったり、オーブン調理で焼き芋をほくほくに焼いたり、1台で何役もやってもらっています。